やみくもに人と争うことはしたくない。そんな考え方のルーツは、誰にも個性と才能があるということに気がついた少年時代にあるのかもしれない。

食パンやロールパンといえば、日本人にとっては特になじみの深いパンだ。

それだけに、飽きのこない毎日食べ続けられる味を目指して、今も研究を続けている。

たとえば、暑い時期には冷たいものを欲し、寒い時期にはあったかいものが食べたくなるのと同じように、体が自然に求めるパン。

「理由はわからないけど無性にあれが食べたい、という気持ちになることってありますよね。

その欲求の本質的な部分を探って、それに接近していくような・・・そんなパンを作りたい。

さりげなく、細く長くおつきあいができるパン。それが望みなんです。」

いつでも抵抗なく食べられる味をめざして、時代とともに日本人の仕事や生活環境を考慮して塩や砂糖の量を加減する。

また、ロールパンについては、生地の弾力や張力の違いが味覚に与える影響を考えに入れて、今でも一つ一つ手で巻くなど、一見どこにでもありそうなプレーンな食パンやロールパンのなかには、じつにさまざまな思いやこだわりが詰まっている。

表面的には強い主張はしない代わりに、食べたときにしっかりした存在感を発揮するパンのおいしさの秘密は、そういうところにあるような気がした。

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